今日は、社労士試験ウォッチャーの私が見てきた社労士試験合格基準の今昔物語をまとめてみます。
多少と言うか、大部分私の主観であり雑感ですので、興味のある方は肩の力を抜いて軽く読んでいただければ幸いです。
「今昔物語」と言うと少し大袈裟ですが、今日フォーカスするのは、社労士試験が理不尽で恐ろしい試験制度と揶揄されるようになった平成25年以降のほんの5年間の物語です。
過去何度かこの社労士試験を受験している方にとってはよくご存知の内容(残酷物語)ですが、今年初受験の方の中にはご存知ない方もいらっしゃると思いますので、この5年間で社労士試験がどのような変遷を辿って来たのかを、わたし目線でご紹介いたします。
当時この記事▼でも書きましたが、社労士試験は3年前(平成27年)以前は合格基準がほとんど「闇の中」でした。
どのように総得点の合格点が決められ、どのように補正科目が選ばれているのか明らかにされない正にブラックボックスの中だったのです。
昨年合格基準の考え方が厚労省から公表されましたが、その前は合格基準が全く明らかにされておらず、どのようにその合格基準が決定されているか知ることができませんででした。
▼厚労省から公表された合格基準の考え方▼
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/sankou1.pdf
以前も今のように昨年対比で考える考え方(推測)もありましたし、事実合格基準が存在していてそれが実行されていたのかもしれませんが、合格率や合格者数ありきでちょうど良い合格基準が行政の裁量でチョイスされているといった考え方(推測)の方が主流(私の周辺では…)でした。
試験問題全体の難易度や、科目別の正解率の高低の順ではなく、丁度良い合格者の人数にするためだけの視点で合格基準が決められているのではないかとさえ見られていたのです。
それはそれは今では想像を絶するようなミステリアスな(恐ろしい)試験制度だったのです。
今のように平均点等の本試験データも公開されていなかったので、発表された合格基準が適正なのか(受験者の能力を公平に反映したものなのか)どうか確認することすらできなかったのです。
その不明瞭さに業を煮やし訴訟に踏み切った方がいらっしゃるほどなのです。
(その結果今のように合格基準が明らかになりましたが、税理士試験はじめ他の資格では合格基準や採点方法が明らかになっていないものはまだまだ沢山あります。)
もう少し噛み砕いて言うと、資格学校の採点サービスデータから弾き出した発表前の予想を嘲り笑うような意外な結果が合格発表日に情け容赦なく晒され、何人もの受験者が阿鼻叫喚をきわめてきた歴史があるのです。
そんな理不尽で不条理な試験制度との悪評が定着する幕開けとなったのが当時としては戦慄の合格率(5.4%)と言われた平成25年の本試験でした。
その平成25年から順を追ってお話しします。
▼社労士試験の直近5年間▼
平成25年
平成25年は選択式の難易度が異常に高く、どの科目が何点救済されるのか注目されました。
中でも「労災」と「社一」が2点救済か1点救済かで喧々諤々議論が繰り広げられました。
結果は「労災」が2点救済で「社一」1点救済でした。
- 「労災」1点救済を予想した資格校:資格の大原、クレアール、 I.D.E、辰巳
- 「社一」1点救済を予想した資格校:ユーキャン、クレアール、I.D.E
逆に「雇用」は資格スクールの予想では救済されないと見られていましたが、意外にも救済されました。
- 「雇用」2点救済を予想した資格校:なし
(結果)
<択一式>45点
救済:なし
<選択式>21点
救済:社一1点、労災・雇用・健保2点
<合格率>5.4%
(ミステリアス)
なぜ選択式で労災が1点救済されず、雇用が2点とはいえ救済されたのか?
なぜ合格率を5.4%まで絞ったのか?(絞ったと能動的に表現するのは、当時は行政の裁量の存在を意識していたため。以下同じ。)
平成26年
平成26年は、難易度が低いと言われた選択式の中でも最も出来が悪いと見られていた「労一」が救済されず、発表前の予想を覆して「雇用」と「健保」が救済されました。
- 「労一」2点救済を予想した資格校:I.D.E、辰巳、その他多くが可能性を示唆
- 「雇用」2点救済を予想した資格校:なし
- 「健保」2点救済を予想した資格校:なし
択一式においては珍しく救済科目(「常識」)が出ました。
- 「常識」を3点救済した資格校:I.D.E
また択一式の合格ラインがかなり高くなるのではないかと予想されましたが、意外に低く落ち着きました。
- 択一式の合格ライン46点以上を予想した資格校:TAC、LEC、資格の大原、クレアール、辰巳
(結果)
<択一式>45点
救済:常識3点
<選択式>26点
救済:雇用・健保2点
<合格率>9.3%
(ミステリアス)
なぜ選択式で労一が救済されず、ほぼ注目されなかった雇用や健保が救済されたのか?
なぜ高い合格点が予想された択一式が予想外に低い合格点で決着したのか?
なぜ合格率を一気に9.3%まで上げたのか?
平成27年
平成27年は史上最低の合格率2.6%となった年度です。
この年は何と言っても選択式でほとんどの資格校が予想した労災が救済されなかったことに尽きます。
未だになぜ労災が救済されなかったのかは闇の中です。
- 「労災」2点救済を予想した資格校:TAC、LEC、資格の大原、ユーキャン、クレアール、I.D.E、辰巳、山川
(結果)
<択一式>45点
救済:なし
<選択式>21点
救済:労一・社一・健保・厚年2点
<合格率>2.6%
(ミステリアス)
なぜ選択式で労災が救済されなかったのか?
なぜ合格率を一気に2.6%まで絞ったのか?
平成28年
平成28年は厚労省から「合格基準の考え方」が公表された年です。
この年は択一式の合格基準点が予想以上に低かったのが特徴です。
- 択一式の合格ライン43点以上を予想した資格校:TAC、LEC、資格の大原、ユーキャン、クレアール、I.D.E、辰巳、山川
また択一式の救済が3科目も行われたのに対し、選択式の救済が2科目に止まったということも発表前に予想を裏切りました。
- 択一式の救済を明確に予想した資格校:なし
- 選択式の「労一」「健保」以外の救済(特に雇用)を予想した資格校:TAC「雇用」、LEC「雇用」、資格の大原「雇用・社一・厚年」、I.D.E「雇用・社一」、辰巳「雇用」、山川「雇用」
(結果)
<択一式>42点
救済:常識・厚年・国年3点
<選択式>23点
救済:労一・健保2点
<合格率>4.4%
(非ミステリアス)
合格基準の通り(以上!)
平成29年
平成29年、注目されたのは択一式の合格ラインでした。
現状の試験制度になって以来、前年比プラス5点以上択一式の合格点が上がったことは一度もありませんが、前年プラス5点となる47点以上になってしまうのかどうか注目されましたが蓋を開けてみれば45点と無難な結果となりました。
ただ補正の可能性があまり高くなかった「厚年」が救済(3点)されました。
- 択一式の合格ライン45点以上を予想した資格校:LEC、クレアール、I.D.E.、辰巳
- 択一式の「厚年」救済を予想した資格校:クレアール、I.D.E.、辰巳
また選択式の労一・健保が救済されるのではないかと予想されていました。
過去何度も悲劇を演出した「労一」救済の有無が大注目でした。
結果は「健保」は予想どおり救済されましたが、大本命の「労一」はなんと救済されず、代わりにまったくノーマークだった「雇用」が救済され大いに驚かされました。
- 選択式の「雇用」救済を予想した資格校:なし
- 選択式の「労一」救済を予想してハズした資格校:LEC、資格の大原、クレアール、I.D.E.、辰巳、山川
<択一式>45点
救済:厚年
<選択式>24点
救済:雇用・健保2点
<合格率> 6.8%
(非ミステリアス)
合格基準の通り(やっぱり!)
いかがだったでしょうか?
平成25年以降、毎年のように独特のドラマが起こっていますよね。
ただ明らかに平成27年以前と平成28年以降ではその趣は異なります。
平成27年以前は合格基準の考え方も全受験者の平均点等の本試験データも公表されていませんでした。
繰り返しになりますが、どのような基準で択一式の合格ラインが決められていたのか、選択式の救済科目が選ばれていたのか全く「闇の中」でした。
昨年公開されたような「合格基準の考え方」に則って決められていたのか、合格率を一定に保つため・政策的に合格率を絞るためにある程度裁量で決められていたのか、永久に誰にもわからないアンタッチャブルな領域だったのです。
でも昨年、厚労省から合格基準が公になった今となっては当面このルールが厳格に守られていくことでしょう。
このルールに基づけば果たして合格率が一定に保たれるのか、逆に乱高下する可能性があるのかは私には知る由もありませんが、今後は粛々とルールに則って合格基準が決められていくはずです。
ある一定の特異な場合を除き、原則的には合格基準の決定は合格率とか合格者数とかはほとんど関係ないのです。
発表前に合格率がどれくらいになるのかとか、合格者数が何人くらいになるのかといった議論は、合格ライン予想という土俵においては不毛な議論ということになります。
関係あるのは平均点の前年比較と、得点分布だけなのです。
それが合格発表日に淡々と明かされ、淡々と合否が下るのみなのです。
以上が【社労士試験今昔物語】深い闇の中にあってミステリアスだった社労士試験合格基準が露わになって改悪?改善?でした。
まとめになっていませんが、これが受験者にとって改悪なのか改善なのかは人それぞれですので正直微妙です。
でも合格基準に遊び(裁量)がなくなったのはほぼ間違いありません。(以前本当にあったかどうかは不明ですが…)
以前のような受験者の疑問と不満をマグマのように充満したミステリアスな試験制度から、無機質で開かれたある意味淡白な試験制度に変貌したのです。
この今昔物語を少し頭の片隅に置いて合格発表までの時間をお過ごしいただくのも乙なものではないでしょうか。
最後になりましたが、みなさんの合格を心よりお祈りしております。
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