(出典:日本経済新聞)
私は「田中角栄」という名前を聞くとなぜか胸騒ぎがしてしまいます。賛否両論ありますが、田中角栄ほど人間的な魅力というか、底知れぬ胆力というか、清濁併せ飲める人は過去も現在も未来においても二度と出てこない政治家に違いないと確信しています。
若い方は名前を聞いたことがある程度の感覚でしょうが、戦後最大の宰相と言われている偉大な政治家で、小沢一郎氏や石破茂氏を始めとして今なお田中角栄に影響を受けた政治家が数多く活躍しています。没後20年以上たちますがその人を惹きつける魅力は脈々と語り継がれています。
◆角栄が育てた政治家・田中派七奉行
小渕恵三、梶山静六、橋本龍太郎、羽田孜、渡部恒三、奥田敬和、小沢一郎
凄いメンバーですね!
◆田中角栄とは...
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そんな田中角栄の名言を100個集めた本を先日書店で見つけたので買って読んでみました。
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◆内容紹介◆
不世出の政治リーダーとして、日本人に鮮やかな記憶を残した田中角栄。
その言葉とふるまいは、世界の要人から雪国の庶民まで、あらゆる人間を魅了し続けた。
時代を超えて語り継がれる人間・田中角栄の「人生と仕事の心得」を厳選した100の言葉で伝える。
また、時代を映す角栄の秘蔵写真を言葉の数に合わせて収録。日本人必読の「座右の書」。
とても読みやすくあっという間に読めました。角栄の言葉というか名言が写真と一緒に100個掲載されいて、それに対して編集者の短い説明というかコメントが各々付いています。
その言葉の中に私が以前まとめた「ついていきたくなるリーダー像」を裏付けしてくれているようなものがいくつかありましたので大変僭越ながら(本当に生意気ながら...)トレースさせていただきたいと思います。
(田中角栄氏に比べれば私など小さな小さなゴミくずのような存在ですが、随所にぐぐっと刺さるものがありどうしてもこのブログでいくつか紹介したいという衝動を抑えることができませんでしたので、田中角栄氏とこの本の関係者の皆様は何卒ひろい心でお見逃しください。)
以前この記事でついて行きたくなるリーダーについて自分なりにまとまてみました。
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「こんな人についていきたい」社員が辞めないリーダーシップ(リーダー像) - ひかる人財プロジェクト
漫画版
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私の「一生ついて行きたいリーダー(シップ)・上司」についての記事がシュールな漫画になりました! - ひかる人財プロジェクト
それをもう一度要約すると...
1.つるんだりせず一定の距離感を保つリーダー
1-1.だらだらと飲み会に行かない、飲み会に部下を連れ回さない
1-2.ただのおしゃべりにならない
1-3.嫌われることを恐れない
1-4.八方美人にならない
1ー5.自分がいない環境を敢えて積極的につくる
2.自分は二の次でとにかく部下を守るリーダー
2-1.信頼できる部下をつくることができる
2-2.忠告を受ける痛みと幸福を忘れない
2-3.部下の成長を心の底から喜ぶ
2-4.対岸の火事にならない
2-5.自分の自慢話をしない
3.やっぱりどこかカッコいいリーダー
3-1.男らしく責任を取り言い訳をしない
3-2.いつまでも懸命に勉強している
3-3.運が良い
3-4.昔話をしない
3-5.人間的な魅力があり一緒にいるだけでワクワクする
4.上に行けばいくほど初心を忘れないリーダー
4-1.メモを取る
4-2.ホウレンソウ(報告、連絡、相談)を忠実に守る
4-3.率先実行
4-4.絶対に最後まで諦めない
4-5.人の悪口や愚痴をこぼさない
上記の項目の青字に色づけした8項目に角栄の言葉(名言)を当て嵌めてみます。
(他にもたくさんありましたがあまり載せると本のネタバレになりますのでアマゾンのレビューにも載っているようなものだけにしました)
一 だらだらと飲み会に行かない、飲み会に部下を連れ回さない
「みんな(警護に当たる警官)若いんだから羽目を外して楽しませてやれ。宿舎に帰るバスも手配しておくんだ。」
・秘書の早坂茂三に警官の人数分の白封筒を渡して言った言葉
・角栄の警護に当たる若い警察官たちを気遣い、早めに勤務からリリースしてやった
飲み会や宴会やで上司とずっと一緒に過ごしたいと思っている部下はあまりいないし一刻も早く羽を伸ばしたいと考えているに違いない。それにいち早く気づき、できれば全員の飲み代も払うくらいの覚悟で解放すればとてもカッコいいしある種ミステリアスですらある。
★この名言から間違いなく教えられることは、「部下を気遣い上手に息を抜かせてやる」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
二 嫌われることを恐れない
「私は荒っぽい医者ですよ。足を切断しなくちゃいけない人には「今日お切りなさい」とキッパリ言う。半端な治療をして足を腐らせてしまうようなことはしない。」
・角栄はどんな非情な話であっても、それを怖れずにズバリということが最良の結果につながるという信念を持っていた
・残酷な事実より甘美なウソのほうが結局は人間をよほど苦しめる
成長意欲のある部下は上司の厳しいアドバイスを間違いなく待っているし、上司は時と場合によっては正直にストレートに部下に対して指導しないとまったく尊敬されないどころかバカにされ舐められてしまうだけである。
★この名言から間違いなく教えられることは、「時には嫌われることを恐れず相手のことを思い厳しい言葉をかける」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
三 忠告を受ける痛みと幸福を忘れない
「田中角栄は話を聞かない、と若い連中は言う。賢者は聞き、愚者は語る。もっと若い連中の話を聞こう。」
・若手議員に言いたいことがあれば、遠慮なく来てくれと田中派議員の会で語りかけた
・その翌日に角栄は倒れ、これが実質的な最後の言葉になった
自分に対して 勇気をもって進言してくれる人を大切にするべきである。イエスマンだけで周囲を固めるようなことは愚の骨頂であるし、多かれ少なかれリーダーは裸の王様予備軍であることを忘れるべきではない。
★この名言から間違いなく教えられることは、「年齢・性別・地位関係なく人の言葉を真摯に聴く」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
四 部下の成長を心の底から喜ぶ
「失敗はイヤというほどしたほうがいい。そうするとバカでないかぎり、骨身に沁みる。判断力、分別ができてくる。これが成長の正体だ。」
・角栄は他人の失敗に本質的には寛容であり、またそれを克服しようとする姿を好んだ
・まさに清濁併せ呑む人間としての強みを持っていた
部下に成果と達成感を与えることで部下を一日も早く成長させることが上司の使命であり快感であるべきである。そのためにはどんどん部下にチャレンジさせ、失敗を恐れない空気をつくることが何よりも重要である。
★この名言から間違いなく教えられることは、「人が失敗を克服し成果を出せたらそれを評価し共に喜ぶ」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
五 男らしく責任を取り言い訳をしない
「できることはやる。できないことはやらない。しかしすべての責任はこのワシが負う。以上!」
・角栄が蔵相に就任した際に大蔵官僚を前に語った伝説のスピーチと言われる就任演説
・エリート官僚たちは肌合いの違う新大臣の言葉に興味を持ち、いつか心酔するようになった
自己保身とプライドだけが先走り、決断もしないし責任もまったく取ろうとしない上司にはだれもついて行かくなる。上司が言い訳をしたり責任逃れをした時点で悲しいかな部下は夢を失い幻滅だけが残る。
★この名言から間違いなく教えられることは、「自ら決断したことに対して責任をとることから逃げない」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
六 運が良い
「人の一生はやはり運だと思う。実力があってもダメなものはダメ。努力と根気、勉強、こういったものが運をとらえるきっかけになる。」
・角栄は一国の宰相にには天が命じなければなることはできないと常々語っていた
・運をつかむための自助努力を欠かさなかった
成功には多かれ少なかれ運が必要であることは間違いないし、運の良い人には運の良い人が集まりどんどん相乗効果が広がっていく。誰もが自分自身も運が良い人でありたいと考えるし、できることなら運の良い人の側にいたいと考えるものである。
★この名言から間違いなく教えられることは、「運をつかむために陰で懸命に努力を積み重ねる」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
七 人間的な魅力があり一緒にいるだけでワクワクする
「祝い事には遅れてもいい。ただし葬式にはまっ先に駆け付けろ。本当に人が悲しんでいるときに寄り添ってやることが大事だ。」
・人が悲しんでいる時に本当に悲しみを共有できるか、人が喜びを感じたとき本当に心から祝福できるかを全うした
・ 角栄は偽りのない感情を人に伝えることで多くの人の記憶に残った
一緒にいてワクワクしたり楽しいと感じる人に惹かれ、ついていきたいと思うのは当たり前のことである。人の痛みや喜びに共感できるだけでなく、ユーモアやバイタリティがあり心に余裕がある人は一緒にいてワクワクするし楽しい。
★この名言から間違いなく教えられることは、「人の感情に共感しそれを相手に素直に伝える」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
八 人の悪口や愚痴をこぼさない
「人の悪口は言わないほうがいい。言いたければ便所で一人で言え。自分が悪口を言われたときは気にするな。」
・角栄はロッキード事件以降いくら攻撃されても個人を名指しで批判した言葉はほとんどない
・多くの人間の力を借りる仕事を続けてきた体験的処世術である
上司がが部下や環境の愚痴を言うと部下も全く同じ愚痴を言うようになるし、愚痴をこぼすこと自体上を向いて唾を吐くことと同じである。それでも愚痴りたいときは人間だれしもあるし仕方のないことではあるが、その時は相手と場所を徹底的に厳選すべきである。
★この名言から間違いなく教えられることは、「人の悪口や弱音を人前で絶対に吐かない」ことが人を惹きつける・人がついてくる条件(魅力)なのではないだろうか...
いかがだったでしょうか。
最後に上記の言葉以外で特に印象深いものがありましたので紹介させてもらいます。私も社内で孤立したこともありますし、若いころ政治家になりたかった時期があったので、角栄の心情が伝わり正直涙ぐんでしまいました。
角栄の熱烈な支援者が人間としての角栄に惚れ込み、投票用紙にひたすらに「角栄」と書き続けたことが生々しく目に浮かんできます。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
「ロッキードで多くの人間が去っていった。世の中そんなもんだ。でも残ってくれた人たちもいた。地元の無名の支援者だ。日頃、何も言わない人たちが残ってくれた。私の宝だ。」
・金権政治がバッシングされロッキード事件が弾けた時多くの人間が角栄から離れていった
・しかし新潟の名もなき農家の人々は角栄を最後まで見捨てず支援し続けた
・地元入りした角栄は見覚えのある支援者たちの出迎えを見たとき顔を歪めて嗚咽した